大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第三小法廷 昭和36年(オ)397号 判決

上告人

辻村ヨシ

右訴訟代理人弁護士

松田英雄

江谷英男

被上告人

井阪喜一

被上告人

堺相互タクシー株式会社

右代表者代表取締役

黒田桂次郎

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人松田英雄、同江谷英男の上告理由第一点について。

上告人が被上告人井阪に対し本件土地の貸借契約について解除の意思表示をした当時、上告人および訴外益子が本件土地について各二分の一の割合による共有持分を有していたことは、原判決の確定するところである。ところで、共有者が共有物を目的とする貸借契約を解除することは民法二五二条にいう「共有物ノ管理ニ関スル事項」に該当し、右貸借契約の解除については民法五四四条一項の規定の適用が排除されると解すべきことは所論のとおりであるから、原審が、上告人および訴外益子の共有物である本件土地を目的とする貸借契約の解除についても同項の規定が適用されること前提として、上告人だけで右契約を解除することはできないとしたのは、法律の解釈を誤つたものというべきである。しかし、共有物を目的とする貸借契約の解除は民法二五二条但書にいう保存行為にあたらず、同条本文の適用を受ける管理行為と解するのが相当であり、前記確定事実によれば、上告人は本件土地について二分の一の持分を有するにすぎないというのであるから、同条本文の適用上、上告人が単独で本件貸借契約を解除することは、特別の事情がないかぎり、許されないものといわねばならない。したがつて、上告人の解除権を否定した前記原審の判断は、結局、正当であり、論旨は採用できない。

同第二点について。≪省略≫

(裁判長裁判官 五鬼上堅磐 裁判官 石坂修一 横田正俊 柏原語六 田中二郎)

上告代理人松田英雄、江谷英男の上告理由

第一点 原判決は「貸主が二人以上あるときには、契約解除の意思表示はその全員よりこれをなすことを要する」とし、上告人より被上告人井阪に対しなした契約解除は本件土地の共有者たる上告人の単独になしたもので他の共有者益子の意思表示がないから契約解除の効果は発生せず、従つて使用貸借もしくは賃貸借契約の終了を原因として土地明渡を求める請求は失当であるとする。

然し共有者が共有物を目的とする使用貸借又は賃貸借契約を解除することは民法第二五二条にいう共有物の管理に関する事項に該当すると解するのが相当である。従つて、この限りにおいて民法第五四四条第一項の規定はその適用が排除されることになる。ところが原判決は上告人のなした本件契約解除につき右規定の適用あるものとしてこれを無効としたことは民法五四四条第一項の解釈適用を誤つたものである。

そうだとすれば右法令の違背は判決に影響を及ぼすこと明かであるから原判決は破毀すべきである。(以下省略)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例